講座3  (続)過剰な保湿ケアは考え物

2021年9月27日

先週の講座:過剰な保湿ケアは考え物に、
こんな不思議な現象に関するコメントをいただきました。

実はこの冬にとっても変わった体験をしたので、聞いてもらおうと思いました。
私は日本海側の実家に、お正月里帰りをしていました。
子供たちと雪遊びを存分に楽しんで、そのまま飛行機で東京に帰ってきたのですが、東京について飛行機を降りたとたん、
つるつるだった手が見る見るうちにがさがさになっていくんです。
こんな経験は初めてだったのでびっくりしました。   (アヤジさん)

この話をいただいて、本当にうれしく思いました。
まさに、今回お話しようと思っていたトピックだったからです。

保湿をすることは肌に良い事とされています。
…確かに正しいです。
ただし、保湿していればいいという物でもない、
と言うことは先週のスキンケア講座で書きました:過剰な保湿ケアは考え物

今回は、化粧品からちょっと離れて、空気の湿度と乾燥について。

空気の乾燥は肌の大敵と言われています。

乾燥を防ぐために、加湿器をかけている人は多くいると思います。
これは正解です。

ただし何ごとも、やりすぎはいけません。

加湿器には意外な盲点が合ったのです。

とても興味深い実験があります。
実験室で、乾燥した環境(10%)、通常の湿度環境(40~70%)、高湿度の環境(80%)
の3種類の湿度環境を用意し、肌の状態を観察しました。

すると、乾燥した環境では角質層が分厚くなることでバリア機能が高まり、
肌はみごとに乾燥した環境に適応しました。
バリア機能が高まった皮膚は乾燥した所でも水分を逃がしません。

ところが、湿度の高い環境ではその逆に、角質層が薄くなり
バリア機能が少し低下しました。

これは、潤いの多い環境では、バリア機能を高める必要がないからです。
人体って、ホント良くできていますね。

ただし湿度の変化に対して柔軟に対応できる皮膚も、
湿度にあまりの落差があると、その変化についていけない事が分かっています。

たとえば、高湿度に順応した皮膚を乾燥した所に急激に移すと、
皮膚は変化に順応できなくバリア機能が極度に落ちることが判明しています。
                                (資生堂ライフサイエンス研究センター)

肌バリアは湿度のギャップに弱いんですね。
どのような場合に、このギャップが生まれるのでしょうか。

冒頭のアヤジさんみたいに旅行の時なんかはそうですね。
湿った冬の日本海から乾燥した東京に行く場合ですとか、
潤う春の日本からカラカラに乾燥した乾季のタイに旅行する時など。
(そもそも、飛行機の機内は異常に乾燥しますからね)

あと、意外な盲点は、実は私たちの日常生活。
現代を生きる私たちは、人類がかつて経験しなかったような
異常な生活環境におかれているのです。

ちなみに、日本の大都市部では100年前に比べ約20%、平均湿度が低下しています。
東京の湿度(グリーンの線)を100年間調べたデータですが、実はこれは80年代の古い資料。現在ではもっと悪化しているのかもしれません。

現代の生活環境は湿度変化が非常に激しい環境です。
たとえばお勤めしている人が、冬場に出勤する事を考えて見ましょう。

 湿度の高い高機密住宅の室内
      ↓
 乾燥した冬の外気
      ↓
 人いきれで湿度の高い通勤電車
      ↓
 暖房で乾燥した職場

と言った感じで、肌は常に湿気の激しい変動にさらされます。
温度差も激しいですね。
(夏ではこの逆ですが、やはり湿度差が激しいことには変わりありませんね。)

ただし、加湿をまったくしないのも考え物です。
冬の関東地方を例にあげると、気温は2度~10度・平均湿度は45%前後です。
この空気を室内に取り入れて20度に上げると一気に25%程度まで下がってしまいます。
(湿度は温度に左右されます。)
これが冬場のオフィスや高気密住宅での乾燥の原因です。

さて、何がいいたいかといいますと、
「肌には潤いが大事、保湿をしなくちゃ!」
ということを良く聞きます。

確かに保湿は大事です。
保湿をすると言う事自体には私は大賛成です。
健康で美しい肌にはやはり保湿は欠かせません。

ただし、何事もやりすぎはいけません。

熱心な方は、「美肌づくりに乾燥は大敵!」
と冬場に加湿器を四六時中つけて湿度を上げるようにしてる人が多いらしいですが
それでは外出時に湿度差によるバリア低下が起きる可能性があります。

冬は冬らしく湿度は抑え目の方が、肌にとってもありがたいんですね。

あまりに乾燥しすぎるのは肌にとって好ましくありませんが、
加湿しすぎも考え物です。

時々湿度計を見て、湿度が60%を超えていないか
チェックして見てください。

特に、90年代年以降に建てられた高気密の住宅にお住まいの方は、
湿度の上がりすぎに要注意です。 
(結露やカビなどの問題もありますしね。)

ちなみに私の家は、あまり自慢になりませんが
築50年のおんぼろ木造家屋で、しかも暖房をケチってるので
そういう心配が全くありません!

■今日のおさらい:

 *肌バリアは湿度のギャップに弱い。
 *湿度のギャップを避けるためには湿度管理をしましょう。
  40%-50%程度が自然で良いでしょう。

以上です。
いかがでしたでしょうか。

今後は週1回、週末に書いていこうと思います。

では!
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