仔猫を捨てた話

近所の焼き鳥屋で、酔っぱらいが話しかけてきた。

そしたら、話しているうちに急に泣き始めてびっくり。

涙ながらに、
「俺はこの前、とってもひどいことをしたんだ。
 お兄さん、聞いとくれよ。」

このおじさん、ものすごく酔っている。

「おととし、猫を2匹飼いはじめたんだ。2匹とも黒くてかわいいんだよ。そしたら、2匹ともが仔猫を産んでさ、12匹になっちゃったんだ。
仔猫は可愛いんだよな。

でも、困っちまったんだ・・・ こんなにたくさんは飼いきれねぇよ。

・・・この先の話も聞いてくれるかい?」

もしかして・・・仔猫を殺したのか、

と思ってちょっと怖くなってきたけど、続きを聞くことにした。

(写真はイメージ画像。友人宅の黒猫ファミリー。)

「俺は、泣く泣く12匹を獣医に連れて行ったんだよ。
で、避妊手術をした。ちょっと安くしてくれたんだけど、25万円もかかったんだよ。

でも、そうしないとどんどん増えちゃうじゃないか。だから仕方なかったんだよ。
でも、可哀想だよな。人間の都合で手術なんかされてよう。」 (・・・シクシク)

それを聞いてホッとして、

「いや、それは立派なことだと思いますよ。
なかなか、猫にそんなおカネ出す人はいませんよ。
そりゃ、最初から、二匹を去勢しとけばよかったかもしれないけど、すんでしまったことは仕方ない。
やるべきことはやったと思いますよ。」と、言おうとしたら、おじさんのセリフにびっくり。

「・・・で、全部の猫を手術して、夜中に山に捨ててきたんだよ。
そしたら子猫たちが、すっかり懐いちまってるもんだから、ニャーニャー鳴いて追ってくるから、かわいそうでさあー。」
と、シクシク泣く。

聞いて、がっかり・・・
何だ、結局、山に捨ててきたのかぁ?!

そりゃひどい、と言うわけにもいかないので、

「次にそういうことがあったら、飼えなくなった猫を引き取ってくれるボランティアグループがあるから、そう言うところに預けると良いですよ。捨てるなんて可哀想だから、次回はそうしてくださいよ。」
とアドバイスをした。

どうやら、そういう団体があるのを知らなかったらしい。

ただ、人里離れた山中にも結構、猫は住んでいるから、意外に大丈夫かも。

以前、人家から何キロも離れた檜原村の山中で、道路脇で定例会議を開いてる野良猫たちを目撃したことがある。すごい数の猫の目がヘッドライトに光っていた。
山の中には、猫の餌になるような昆虫、ネズミ、りす、蛇、カエルなんかも結構いるから、そういうのを捕まえて食べてるのだろう。

山に捨てられた10匹の仔猫たちの運命やいかに。